東京入管で自死したイタリア人男性の命日に入管庁へ申入れ【2024/11/18】
2023年4月20日、入管庁に申入れ を行い、亡くなったイタリア人男性の仮放免取消しおよび収容に関する疑問点を尋ねるとともに、事件の経緯をまとめた調査報告書の作成・公表を求めました。4月26日、入管庁から回答がありましたが、故人に関することについて具体的な回答はなく、調査報告書の作成・公表については、内部調査の結果、問題視すべき事情は見当たらなかったとして、「自殺事案という性質も踏まえ、詳細な調査報告書の公表等を行う予定はありません。」とのことでした。入管の収容施設内で人が亡くなっているにもかかわらず、自死だから仕方がないと言わんばかりの回答は、およそ容認できるものではありません。
故人の2回目の命日となる2024年11月18日、事件の真相究明と再発防止を求め、改めて入管庁に対して申入れを行いました。
夜7時からは、LEDキャンドルを点灯し、法務省前で追悼集会を行いました。
申入書
2024年11月20日
法務大臣 殿
出入国在留管理庁長官 殿
2022年11月18日に東京出入国在留管理局の収容施設でイタリア人Gianluca Stafisso氏(以下、「A氏」という)が自死した事件に関し、私たちは2023年4月20日に、貴庁出入国在留管理庁に申入書(以下、「前回申入書」という。添付書類1)を提出しました。前回申入書では、A氏の収容の経緯及び収容中の処遇に関する質問に回答を求めるとともに、本事件に係る調査報告書の作成と公表を求めましたが、同年4月26日付けの貴庁のご回答(以下、「回答書」という。添付書類2)は、およそ誠意のない内容でした。
本事件は、前回申入書に述べたとおり、A氏に対する適切な配慮があれば死を防ぐことができたと思われる点が多々存在します。貴庁は、回答書において、調査報告書の公表等を行う予定はないとし、実際にA氏の死亡後、経緯等の詳しい説明並びにその公表は一切ありませんでした。しかし、貴庁の管理する施設で人の命が失われているのですから、貴庁には社会に対し、疑念の生じる余地のない説明をする責任があります。
A氏は、収容される前から精神的に不安定な状態にありました。前回申入書で指摘したとおり、A氏の精神状態について、貴庁は、2018年10月18日付けの「パラノイア(の疑い)(妄想性パーソナリティ障害の疑い)」の診断報告書の存在を含め、イタリア当局から十分な情報提供を受けていました。しかし、本事件後の参議院法務委員会並びに記者会見等で、貴庁は、収容後のA氏に内科医は受診させたが精神科医は受診させなかったと述べてきました。精神疾患・障害を有する人の収容に際しては、収容及びその継続の判断も含め、専門的な対応が必要となるところ、精神科医を受診させなかった事実こそが、貴庁において精神疾患・障害を軽視していることの証左です。こうした本事件の経緯を鑑みるに、精神疾患・障害を有する人に対する必要な配慮、あるいは一見健常に見える人の精神疾患・障害の有無や希死念慮の察知といった知見が、貴庁の看守職員にあるとは認められません。それにも拘わらず、貴庁は本事件以降も、精神疾患・障害を有する人の収容を漫然と続けています。現にBOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)は、多くの被収容者と面会を続けるなかで、昨今も東京出入国在留管理局に、精神疾患があり抗精神薬を服用している人、あるいは精神疾患を疑われる人が折々収容されていることを確認しています。
私たちは、貴庁が精神疾患・障害を有する人を収容せず社会で処遇することとし、現に精神疾患・障害を有する人及び精神疾患・障害の既往のある人を収容しないこと、また収容中に精神疾患を発症した人の収容を直ちに解くことを求めます。
その上で、A氏の事件のような悲劇が繰り返されないことを願い、A氏の命日に当たる今日、改めて貴庁に下記を申入れ、12月2日までに文書による回答を求めます。
記
一、A氏の事件について
(1)上述のとおり、貴庁は、A氏の精神疾患・障害についてイタリア当局から情報提供を受け、A氏の不安定な精神状態を把握していた。A氏の収容に当たり、どのような配慮をしていたか。
(2)A氏の事件の後、公表されていないにせよ、本事件の経緯の検証と再発防止を図る何らかの取り組みは実施したであろう。それらに係る文書を公開するとともに、改めてA氏の仮放免取消しから収容、そして死亡に至るまでの経緯に関する報告書を作成し、社会に公表してもらいたい。
二、精神疾患・障害を有する人の収容について
人身の自由を奪う収容は、健康な人にも容易に心身の不調を来すほどの強いストレスを生じさせるものである。そのような状態に精神疾患・障害を有する人を留め置いて、病状の安定を期すことはできない。また、精神状態を見極め、自死のリスクを察知するには相応の専門性が不可欠であり、貴庁の収容場の看守職員が適切に対応できるものではない。精神疾患・障害を有する人への対応に係る方針と対応策について、貴庁において現に有するならばその公表を、有しないならば策定のうえ社会に公表することを求める。
以上
0コメント