【第1回 】入管法改悪反対 緊急院内集会 「難民を認めてほしい」難民申請者から訴え
2023年3月23日、参議院議員会館で「入管法改悪反対 緊急院内集会」を行いました。
政府は、入管法改悪法案を、3月7日に閣議決定し、通常国会に提出しました。今回の法案は、①送還停止効の制限、②監理措置制度の創設、③仮放免逃走罪や退去命令違反罪など罰則の創設等、21年法案の骨格を維持したものであり、すでに国内外の支援者や専門家からは人権侵害であると強い批判を受けていますが、根本問題は、入管の権限をさらに強化し、入管が「送還忌避者」と呼ぶ、退去強制処分を受けて送還の対象となっている人たちに対して罰則や規則等を設けて、送還を促進することにあります。
今回行った集会は人の命や健康よりも送還を優先する入管の送還方針、それを強化しようとする入管法改悪法案に反対し廃案を求めることを目的に開催し、帰国することのできない事情を抱える当事者が各ケースごとに登壇し、大学生の支援者とともに政府法案の問題を訴えました。
第1回目は「難民申請者のケース」をテーマに、複数回の難民申請を行いながらも在留を認められず、仮放免の状態で暮らす3名の方にご登壇いただき、実情を伺いました。
1. 指宿昭一弁護士(入管闘争市民連合代表)より開会挨拶
開会に先立って入管闘争市民連合代表の指宿昭一弁護士から挨拶がありました。
「入管法の改悪案が閣議決定され、国会に提出された。これを何とかして止めるべく、今日から三週連続で院内集会を企画した。今回の改悪案は、二年前に廃案になったものとほとんど変わらない。3回以上の難民申請者を強制送還、「送還忌避者」に刑罰を科すなど。
入管政府は、市民社会やメディアを軽く見て、時間が経ったから大丈夫と思っている。ウィシュマさん事件の衝撃から、入管の制度体質への批判が高まり、廃案になった。そこから何も解決していない、誰も責任を取っていない、的外れの改善策で幕引きを図っている。改悪案が審議入りしたことは残念だ。
今回は難民申請者ケース。当事者の声、切実な訴えを伝える。日本の難民制度は機能していない。認定率0.7%、入管庁は難民認定について新たな基準を出すと言っているが基本が変わったわけでは決してない。個別把握論、問題山積。基準だけでなく手続きもきちんと行われてない。今の状況では到底まともな難民審査はできない。野党が言うように、独立した機関が必要。当事者の生の声から、実態を知って、国会や市民運動、メディア報道で活かしてほしい。」
2. 難民申請中の当事者からの訴え
当日はインタビュー形式で3名の当事者から訴えを伺いました。
● ハンナン・ミアさん
バングラデシュ出身。1988年3月に来日。
①来日経緯
母国で命が危なくて、来日した。その時はビザ不要で、早く入れる国が日本だった。安全な国だと思っていた。
②日本に来てどうやって生活をしていたか。
言葉はわからなかったが、生活のために仕事をしていた。その時は今ほど厳しくなかったし、難民申請の手続きについて、誰も知らなかった。警察にも周りにも、難民申請の手続きをしなくても悪いことをしなければ問題ないと言われた。難民申請をしなくても、生活できていた。
③難民申請はいつしたか。
入管の中で、オーバーステイだから帰れと言われ、問題あるから帰れないと答えた。そこで初めて難民申請のことを教えられた。
※ 入管側は、来日してすぐ申請をしない人は難民ではないと主張するが、このようにやむを得ない事情があり難民申請をしていなかった、できなかったケースがある。
④強制送還された場合、迫害の危険に加えて、家族と離れ離れになってしまうこと。
難民と認められていないが、嘘ではないから何回も申請をする。どうして、奥さん (集会中、隣に座っていた) とバラバラにするのか。日本人だったらそういうことをやらないだろう。私たちが外国人だからそういう扱いをするのか。それは差別だ。なぜ奥さんと離れ離れにするのか。人間として考えてほしい。奥さんも人間じゃないというのか。
法律が変わると、もうこれで三回目だから、無理やり帰されてしまう。そうしたら私の家族はどうなるのか。みんなに聞きたい。答えてほしい。誰が私の家族に責任を取るのか。何かあったらどうするのか。
法律がなぜ変わるのか。日本で難民を認めないことに問題がある。繰り返しやっているのは入管。申請したらインタビュー、何か月も経って結果が出る。いくら証拠を出しても認めない。命が危ないとき、証拠を出すことができるというのか。「誰か写真撮ってください」難民としての証拠。命が助かるか、写真か、どちらが大事なのか。銃で撃たれた。写真を撮れるのか。
法律が変わるとみんな困る。難民を認めてほしい、認めてから変えてほしい。世界でどれくらい認められているか、見てほしい。
⑤今回の入管法の改悪になぜ反対するのか。
調べてほしい。調べたら、認められる自信がある。帰国したら命が危ない。調べて、本当の結果を出してほしい。まず難民のこと、家族のことを考えてから、法律のどこを変えるか議論してほしい。
⑥国会議員、市民に伝えたいこと
忙しい中来てくれて、私たちの話を聞いてくれて、ありがとうございます。これから、法律変えるために色々なことを入管はやっているが、その前に、私たちのことを考えてほしい。国会で話してほしい。難民、家族がいることを考えて、反対してほしい。私たちを追い出すのではなく、認めてほしい。仮放免の人も人間。難民は、母国で命が危ないから逃げてきた。差別される、改悪がされたら、ここで死ぬしかない。死んでいいのか。日本人みんなに知らせてほしい。みんなで声をあげてほしい。本当にありがとうございます。
● デニスさん
トルコのクルド人。
①来日経緯
母国で殺されそうになった。デモに参加して警察から暴行を受け、家族や自分が脅迫を受けた。日本の入管は本当にファシスト。
難民申請は4回目。クルド人、ヨーロッパは難民と認めるが、日本では認められない (政治的事情) 。
②入管法が改悪されたらどうなるのか。
改悪されたら、申請中でも送還できてしまう。日本人の妻がいるのに配偶者ビザももらえない。
すでに悪いのにもっと悪くなる。入管で三年半捕まった。結婚が認められない、おかしいところだらけ。私たちの命が危ない。メディアに多く出ている、トルコ政府もわかっている。国に帰されたら確実に殺される。入管は私たちに「ルールを守って」と言う。それなのに、国連のルールは守らない。
いっしょにがんばろう。日本は良い国、みんな優しい、でも政府だけはファシスト。私たちのことは嫌い、私たちはテロリスト、悪い人とする。政府は変わってほしい。命が危なくなる。
③日本の政府入管にはどう変わってほしいか。
国連のルールは守ってほしい。そうすれば、私たちの命が守られる。日本はそういうことができない。私は自殺未遂を何回もした。精神科の医師からも「とても悪い状態」。幻覚、幻聴に悩まされる。私は今生きているけれど、心は死にました。自分だけでなく、みんなのために闘う。政府もこの法律が悪いと分かっている。政府は自分たちを殺そうとしている。本当にファシスト。変わらないといけない。入管が変わらないと、これからも人が死ぬ。
④国会議員、市民に伝えたいこと
いっしょにがんばりたい。私たちはテロリストではない。命のために日本に来た。生きるために来た日本で、死ぬ気持ちを味わっている。命がとても危なくなる。議員さんも、私たちのため、人間のため、がんばってほしい。17年日本にいる。私もあなたたちと同じ人間です。生きるため、平和のために、いっしょに頑張りたい。ありがとうございます。
● サファリさん
イラン人。難民申請をしている。帰れない事情がある。2016年に収容二回目。長期収容。
①入管の処遇で酷かったこと
犯罪者扱いをする。一番ショックだったのが、「あなたたちは見せしめのため」と言われたこと。他の難民を国に帰らせるため。人権を守ってもらえないことが多かった。「元気な限り入管に閉じ込めることにする」と言われるなど。
②ハンストについて。なぜしたか。
私たちは人間だから。三年以上収容されて、申請しても理由を知らせずにダメと言われる。一日一日が大切、私たちの人生だから。人間として認めてほしいから。同じブロック、いろんなところでしていた人がいた。
できる限りの抗議をしていた。命の危険がある。
③入管法の改悪に反対する理由。
難民の人には帰れない理由がある。命が危ないから日本に助けを求めている。入管は自分たちに法律を守れというが、入管自らが法律を守っていない。人権、私たちは人間だから。国連の意見を無視、国際的なルールを守らない。矛盾だらけ。
④国会議員、市民に伝えたいこと
忙しい中集まっていただきありがとうございます。いっしょに声をあげていただきありがたい。人間として守ってほしい。国際法を守ってほしい。国連が言ったことを大切にしてほしい。犯罪者扱いする。私たちは犯罪者ではない。帰れば命が危ない人もたくさんいる。私たちの存在を認めてほしい。帰すだけを考えるのではなく、調べてほしい。調べないで結果を出すな。証拠が集められたらもっとしたい。政府に言っても出すはずがない。「帰ったら殺す」と誰が言うのか。犯罪者扱いをするのをやめてほしい。ありがとうございます。
3. 学生支援者より
最後に入管問題に取り組んでいるBOND学生メンバーから報告がありました。
入管、政府が、外国人を差別し抑圧するために自らを正当化しようと打ち出している論理や方針は、本当に矛盾だらけで、これは当事者の置かれている状況を見れば明らかです。
生まれたときから日本にいるのに、ずっと日本で働いてきたのに、家族が日本にいるのに、帰国したら迫害のおそれがあるのに、その人たちを無理やり母国に送還することが何を意味するのか。想像してみてください。国がその方針によって人の権利を不当に侵害する、家族を引き裂く、人を死に追いやる、そんなことは絶対に許されません。
ミアさんが先ほどおっしゃったように、「私たちを追い出すのではなく、認めてほしい」。誰でも受け入れろと言っているのではありません。他の国と同じように、助けを求めて日本にやってきた難民を難民として認め、在留するしかるべき理由のある人が 日本で安心して暮らせるように、日本で生きる権利を、当たり前の権利を認めるべきです。
ある時期までは外国人を都合の良い労働力として黙認していたのに、突然方針を変えて、収容する、強制送還する、政府のご都合主義的な方針転換にふりまわされた、いわば犠牲者である当事者に、責任転嫁をしないでください。
先ほど当事者の方からお話があったように、入管のいう「送還忌避者」は、ただ帰らないのではなく、帰れない切実な事情を抱えています。だから、強硬的な方針をとっても、入管法を改正・改悪しても、犠牲者が増えるだけで、何の解決にもなりません。入管法が改悪されてしまったら、今回の改悪が成立してしまったら、送還一本やり方針がさらに強化されることとなり、デニスさんもお、サファリさんも、ミヤさんも、強制送還の対象になります。家族と会えなくなって、本当に「いつ殺されるかわからない」状態になります。
当事者の、そして私たちの声を聞いてください。当事者の置かれている状況を知ってください。必要なのは、入管法の改正ではなく、在留するしかるべき理由のある人に在留資格を与えること、難民を難民として認めて保護することです。
野党議員の皆さん。入管法の改悪には、反対を貫いてください。これは決して、外国人だけの問題ではありません。抗議しなければ、同じ社会で起きている人権侵害を黙認することになります。当事者の命がかかっているんです。どうか、本来保護されるべき人が守られるように、動いてください。
まとめ
当事者からの発言にある、帰国できない事情に対し、入管庁の「送還一本やり方針」に全く道理はありません。野党議員の皆さんには実際に難民として保護すべき当事者がいることをを踏まえ、入管の権限を強め、本来保護すべき人さえも追い出そうとする政府法案を国会審議においても法案成立反対を貫いて共に闘っていただくことを求めます。
※次回以降の開催スケジュール
「配偶者、家族がおり家族分離に繋がる当事者による報告」
日時 2023年3月30日 12時~13時
場所 参議院議員会館 B101会議室
登壇者(予定):配偶者、家族のいる仮放免者、大学生の支援者
「未成年仮放免者の抱える状況の報告」
日時 2023年4月6日 12時~13時
場所 参議院議員会館 B105会議室
登壇者(予定):支援する大学生、弁護士が未成年仮放免者の書いた作文、絵画を紹介し、彼らの訴えを紹介
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